その3

■□■ プロだって得手不得手がある ■□■

私は自分でヘタレやなぁと思う部分があちこちにあるのですが、思ったとーーーりのヘタレぶりを発揮しました。
悶々として、なかなか寝つけずにいたのです。やっと眠っても、浅い眠りのまま朝になりました。
体が丈夫じゃないんだから、ちゃんと寝ないとダメなのに、こういうところがいけません。大人になっても直りません。

そして寝不足の土曜日の朝。
月曜日の午前中に岐阜の家庭裁判所に家族全員(旦那さんは違うよ。私の配偶者なので関係ないんで。)で申請書を提出することに決めていました。
しかし、その前に専門家の意見を聞いておきたいと思いました。

旦那さんが調べてくれた連絡先に電話し、名古屋の弁護士会館で行われている有料相談に行きました。
旦那さんがプリントアウトした資料や、おかんからのFAXなどを持って相談に行きました。

窓口で相談内容を記入し、ラウンジで少し待ちました。
少しの緊張と、寝不足のせいで喉が乾いていたので、自動販売機で買ったお茶を飲みながら待っていました。
待っている人は他にも数人いました。
『ここにいる人は、みんな困ったことを抱えてるんだよなぁ。』と思ったら、ちょっと寂しい気分になりました。


私達が呼ばれました。
指定された個室に入ったら、年配の弁護士さんが座っていました。早速、おかんのFAXを取り出し、私は早口で説明しました。
私の説明が一息ついたところで、弁護士さんは言いました。
「残念だけど、お父さんが亡くなってからこんなに時間が経っているから、相続放棄はできないよ。」
「え?」と、しか私は反応できませんでした。
家庭裁判所に申請するのも無駄ってこと?申請しても認められないかもしれないことは理解してたつもりけど、うちの場合は絶対にダメなの?どこが問題なの?と、頭の中でぐるぐるしてしまい、何と言っていいか分からなくなってしまいました。

すると旦那さんがインターネットで調べた資料を取り出し言いました。
「インターネットで調べたんですが、妻の実家の事情とよく似てる場合で、放棄が認められた判例があると弁護士が言ってるんですが。」
「そうなんですか?」と弁護士さんは少し驚いたような表情をされて、旦那さんが差し出した資料を読み始めました。

読み終わった弁護士さんは、
「そうですね。すぐに家庭裁判所に申請した方がいいですね。だからと言って、認められるかどうかは何とも言えませんが・・・・。これは本当に特例のようですからね。でも、すぐに申請に行った方がいいですね。」と、言いました。
「分かりました。そうします。」と、私たちは言い、相談を終えました。


弁護士会館から地下鉄の駅までの道は、少し風が強かったのですが、寝不足で微熱気味の私には丁度気持ち良く感じました。
歩きながら旦那さんは言いました。
「専門家に相談に来たのに、俺らが調べたことの方が上だったねぇ。」
「うーん。そうだねぇー。」
私は何て言っていいかよく分からず、そう答えると、続けて旦那さんが言いました。
「でも、あれを読んで、申請した方がいいって弁護士が言ったんだから、素人判断だけじゃなくて、申請してみる価値はあるって気になったよねぇ。」
「あ、そうだねぇ。」
正直、なんだか相談した甲斐があまり無かったなぁ、とも思ったのですが、そういう考え方をすれば確かにその通りなのです。

「んーーー。あのね。あたしもそうなんだけどさぁ・・・。」と、私は旦那さんに話しかけました。
「コンピュータ関連の会社にいるのに、コンピュータのことはあまり分かっとらんやんねぇ。それと同じで、弁護士さんにも得手不得手があるんやろうね。」
「んー。そうやねぇ。全部の判例を頭に入れてることなんて無理やもんね。自分が担当した事件の周囲の判例とかはよーーく知ってるだろうけど、そうじゃない部分は難しいだろうねぇ。」
旦那さんは続けて言いました。
「自分たちで調べることが必要ってことやね。」
「うん。プロでも得手不得手があるんやもん。自分のことは自分で守らないとアカンもんね〜〜。」と、私は言いました。





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