◆◇◆ 3億円事件 ◆◇◆

正確に言うと3億円借金事件です。
もっと正確に言うと3億3千万円借金事件です。
突然ふりかかってきた多額の借金にくらくらしました。
人生、何が起こるか分かりません。ほんとに。


その1

■□■ おかんからの電話 ■□■

春先は自律神経のしなしな度が高くなりがちです。
今年の春も例に漏れず、しなしなしていました。
加えて、軽く胃腸風邪なんぞも拾ってしまい、体調はかなり低調でした。
さらに加えて、仕事も通常作業以外の業務が重なり、ストレスも多めの状態で、あまり好ましくない状況になっていました。
いえ、好ましくないどころか、体調を壊してドクターストップで1週間の休養をとった後で、その日なんて胃透視の検査をしていました。
そして、バリウムを出しちゃうための下剤が効き過ぎたのか、腹痛が辛くてウンウン唸ってました。

そこに、実家のおかんから電話がかかってきました。
いつもの他愛のない電話かと思っていたら、おかんはとんでもないことを言い出しました。
「お父さんね、3億円もの借金を○○銀行にしてたらしいんよ。」

・・・・はい??
・・・お母さま、今、なんておっしゃったの?


私の自律神経は一気に交感神経全開になってしまいました。


■□■ うちのお父さん ■□■

糸を作る職人さんでした。
お父さんは、自分の腕やアイディアに自信を持っていたようです。
そして、評価もされていたようです。

が、しかし。
根がお人好しで、他人ばかりを儲けさせて、自分は損ばっかりしてる人でした。借金もたくさんあったようです。
そんなお父さんだったので、我が家は貧乏で、おかんはお金の苦労ばかりしてきました。
けれども、子供たちは卑屈になることもなく、お父さんを尊敬してました。
おかんの育て方が真っ当だったおかげです。

ただ、おかんに苦労させっぱなしのまま、肺ガンで死んでしまったので
『それはちょっとアウトやったねぇ。』とは思います。
まぁ、お父さん自身も強く思ってることでしょうけれど。


さて、そんなお父さんですが、肺ガンで倒れる前に大事件がありました。
勤めてた会社に存続の危機が発生したのです。
そのため、お父さんは寝る間も惜しんで対応してたようでした。
結局、会社は消滅、社長は自己破産となり、会社は新しい会社として再出発することになりました。
このバタバタのため、お父さんは肺ガンになってしまったと言っても過言ではない状態でした。

末期の肺ガンだと医者に言われても、私達には「大丈夫。お父さんは生きるから。」と言っていたお父さんでしたが、やはり末期ガンには勝てませんでした。
生き続けるつもりだったお父さんは、死後のことについては何も家族に言い残さずに3カ月で逝ってしまいました。
私も、危篤状態になったお父さんを見るまで、根拠もないまま『お父さんはまだ死なない。お父さんが死なないって言っただもん。』と信じていたので、死後のことなんて考えもしませんでした。
まぁ〜、バカな家族って言っちゃえばその通りなんですけどねぇー。
でも、信じていたんです。お父さんの言葉を。


■□■ で、おかんが言うには ■□■

落ち込んでるおかんが言うには、4年半前に死んだお父さんが消滅した会社のために3億円の借金をしているよ、という通知が○○銀行から突然届いたとのこと。
ビックリしたおかんは、共産党の弁護士さん(共産党の弁護士さんなら弱者の味方になってくれると、おかんは思ったらしい。)に電話し予約しようとしたところ、「何の相談かね?」と聞かれたので、かいつまんで事情を話したそうです。
すると、
「ああ、それはもう相続放棄できないから、奥さんとお子さんみんなで自己破産した方がいいよ。」
と、言われたそうです。
相続放棄というのは、死後3カ月以内じゃないとできないんだそうです。
なので、我が家に突然舞い込んだ3億円もの借金についても、おかんと私達子供がみんな相続しているものなんだそうです。

家も借家。車もない。貯金もない。なーーんもプラスの遺産が無いのに、膨大なマイナスの遺産を相続してるだなんて、悪夢のような話です。

確かに、実家のおかんや弟たちには財産なんて何もないし、私もちょこっとの貯金くらいで何も財産がありません。(車は旦那のものだし、借家のアパートに住んでるので。)
自己破産したって、実際の生活が変わるわけではありません。

「・・・分かったよ。泣かんでええで。うんうん。」と、おかんに言って、電話を切りました。

でも、
『分からん。分からんってば。本当は全然っ分かってないってば。というか分かりたくないよぉ。そんな話・・・。』
という気持ちでした。本当は。
けれど、弁護士さんがそう言うなら、あきらめて自己破産するしかないかぁ・・・と、思いました。
体の弱い嫁さんってだけでも旦那さんに申し訳ないと思っているのに、こんなことになっちゃって・・・・旦那さんに申し訳なさすぎだぁぁ、と思ったら、涙がぼろぼろ出てきました。


しかし、私には勇者様がついていたんだと知ることになりました。




その2を読む